Shimpei Wakida's Blog

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『異文化理解力――相手と自分の真意がわかる ビジネスパーソン必須の教養』読んだ

直近チームに新卒のベトナム人エンジニア3名を迎え入れ、彼らとの仕事上のコミュニケーションや関係構築において何かヒントが得られないかと思い読んでみた。

本書のメインテーマは、グローバルなチームでビジネスする上で最も重要なのは「異文化理解力」ということ。「文化の違いがあるのはまあ認めるけど、実際の仕事においては個人に向き合ってそれぞれ対応する方が大事じゃない?」という疑問に対して真っ向から反論している。

もちろん同じ文化的背景を持った人同士でも各個人差はあるが、それと同じくらい(時には、それよりも)重要なのが文化の理解。

「相手と自分の文化の違いを理解し、みなが心地よくイイパフォーマンスを出せる環境を作り出す」ことが、グローバル環境において「仕事ができる」ということになる。

本書は、ビジネスの場面で文化の違いによる差が大きく出るそれぞれの要素について、それぞれの国がどんな文化特性を持っていて、異なる文化を持つメンバーが混在するチームでどのように振る舞うべきか?が語られている。

まず大事なのは、文化の違う人たちの関係性を測るとき、重要なのは各文化の絶対的な位置ではなく、相対的な位置関係。たとえば、全世界で見ればハイコンテキストなコミュニケーションを行うグループに属する日本人と中国人も、両者の比較で見ると日本人の方がよりハイコンテキスト、ということになる。日本人にとって中国人は、ローコンテキストなコミュニケーションを取るので、理解した上でコミュニケーションのスタイルを変える必要があるかもしれない。

世界との相対的な関係性の中で各国の位置関係が見れたが、これは日本人同士においても通ずる話だなと思った。

たとえば、スタートアップで少人数のうちは同じコンテクストを持った東アジア的な組織といえるし、拡大するにつれて多種多様なバックボーンを持った人が入って共有しているコンテクストも少なくなれば、アメリカ的な組織になっていくと考えられる。

全ては相対的な位置関係で語られるということを忘れず、海外の方とも、日本人同士とも、よりよい関係性を構築していきたい。

以下、具体の指標についての読書メモ

読書メモ

全体的な話

  • 何が文化的違いを生んでいるか?の大きな要因の1つに、宗教がある。東アジア地域の国は、ほぼ全ての指標で同じような文化特性が見られるが、これは中国から派生した儒教の影響が大きいとのこと。
    • 直近宗教の入門書を読んだので、その本と内容が繋がってより理解が深まった
  • ほぼ全ての指標において、日本は最も極端な位置にある

指標の一覧

  1. コミュニケーション(ローコンテクスト/ハイコンテクスト)
  2. 評価(ネガティブフィードバックが直接的/間接的)
  3. 説得(原理優先/応用優先)
  4. リーダーシップ(平等主義/階層主義)
  5. 決断(合意志向/トップダウン)
  6. 信頼(タスクベース/関係ベース)
  7. 見解の相違(対立型/対立回避型)
  8. スケジューリング(厳密 /柔軟)

1. コミュニケーション(ローコンテクスト/ハイコンテクスト)

  • 日本は世界で最もハイコンテクストな部類
  • 言語と歴史の相互作用で決まる
    • ハイコンテキストな言語は、1つの単語が複数の意味を持つことが多いので、最後まで聞いて文脈を考慮しないとその単語の意味するところが分かりづらい。ローコンテキストな言語は、1つの単語が複数の意味を持つことが少ないので、単語数が多くなる
    • ハイコンテクストな文化圏は、長い間共有してきた歴史を持っていることが多い
      • アメリカは、多くの移民で成り立っているかつ国の歴史が数百年と短いため共通のコンテクストを持っておらず、世界で最もローコンテクストな言語
    • → 日本人同士でも同じことは言えそう。スタートアップにおいては、人数が少ないうちは皆がコンテクストを共有できているから多くを語らなくても阿吽の呼吸で動けるけど、人数が増えてくるとそれでは立ち行かなくなる。拡大過程で、あらゆる明文化が必要になる。
    • → 日本人はその文化的特性から、透明性を高めることが苦手と思われる。ビジネスにおいて非常に重要とされる透明性の担保、それがある程度できる人/チームというのは、それだけでめちゃくちゃ尊い存在なのかもしれない
  • ハイコンテクスト同士のコミュニケーションが、最もミスを起こしやすい
    • 互いが同じ文化的背景を共有していることで、互いの文化的信号を読み取ることができる。それがない関係性においては、むしろコミュニケーションミスが起きる可能性は倍増してしまう。解決策は、互いにローコンテクストであるようにする。

2. 評価(ネガティブフィードバックが直接的/間接的)

日本は最も間接的に伝える位置。

3. 説得(原理優先/応用優先)

原理優先は「理論や概念から説明し、意見や結論は最後」、逆に応用優先は「結論を最初に、あとから理論や概念を補足」する。 アメリカは応用優先、ヨーロッパは原理優先が多い。日本はじめとするアジアの国は、両方を使いこなすことができる。

4. リーダーシップ(平等主義/階層主義)

上司-部下の関係性が、よりフラットなのが平等主義、日本のように強く上下関係が存在するのが階層主義。ここでも日本は最高レベルの階層主義に位置する。

5 決断(合意志向/トップダウン)

決断は全員の合意を重視するか、個人でされるかという違い。日本はもっとも合意志向に位置する。 合意は、決断までに時間はかかるが一旦決断してしまえば実行は早い。トップダウンは、素早く(主に上司が)個人で決断するが、あとから変更がされることも前提となっている。

リーダーシップとも密接に関係し、一般的には平等主義は合意思考に、階層主義はトップダウンになることが多いが、日本は世界でも珍しく「階層主義で合意志向」。稟議の文化がその象徴。めちゃくちゃ時間がかかる面倒なプロセスとして批判されがちだが、いざ決裁されると稟議プロセスに関わった全員が内容を把握しているので実行は早いというメリットもある。理論上は。

6. 信頼(タスクベース/関係ベース)

業務上の「信頼」が、タスクと人間関係を分けて考える(タスクベース)か一致しているか(関係ベース)、の違い。

日本は関係ベースよりだが、中国やタイの方がより関係ベース。

日本で飲みニケーションが根付いているのは、必然だなと思った。

7. 見解の相違(対立型/対立回避型)

読んで字の如く。対立回避型は、グループの調和や面子を重視するので、表立って対立することはしないし、対立した場合は関係性に影響する。

日本は、最も対立回避型に位置。

8. スケジューリング(厳密 /柔軟)

日本は厳密の方に位置する。もっと厳密なのはドイツ。柔軟なのは、途上国など、日々の生活が絶え間ない変化(政治・経済・気候・etc...)を前提に回っている国が多い。変化が多い国では、柔軟に変化に対応できることが利益に直結する。