Shimpei Wakida's Blog

日々の学びをゆるりと.

『問いかけの作法』読んだ

仕事で会議のファシリをやることがそれなりにある。しかし、「意見を促し議論を活発化させる上手な問いかけ」ができていない課題感がずっとあった。読んだ感想としては、これがちゃんと使いこなせたら相当チームのパフォーマンス上がるだろうな、と思う。実践するのはとても難しいけど、少しずつ使って身につけていきたい。

memo

  • チームの問題は、過渡期にあることからきてる。ファクトリー型からワークショップ型への過渡期。
  • ファクトリー型への環境適応による「4つの現代病」

    1. 判断の自動化による、認識の固定化
    2. 部分的な分業による、関係性の固定化
    3. 逸脱の抑止による、衝動の枯渇
    4. 手段への没頭による、目的の形骸化
      • 人は、目的なきことにも没頭できる = 学校教育の賜物
  • チームのポテンシャルが発揮されるための循環

    • 「こだわり」を見つけて育てる
    • 「とらわれ」を疑い、問い直す
  • こだわりを見つけて育てる
    • 内なる動機で生まれた「やりたい!」から見えてきた個々人のこだわりの違いを、チームを豊かにする「個性」として認め合い、対話を通じて深く理解しようとすることが重要
    • そこから共通の核となるチームとしてのこだわりを育てていく
  • とらわれを疑い続ける

    • 自分たちのものの見方は、捨ててもいい「とらわれ」なのか?これからも守るべき「こだわり」なのか?を探索し続ける姿勢
  • 議論と対話

    • チームのコミュニケーションには、「雑談」「議論」「討論」「対話」の4つがある
      • 議論
        • 合意形成や意思決定のための建設的な話し合い
          • 最適な結論を求めることが目的
        • ファクトリー型で最も利用される
      • 対話
        • 議論と違い、最適な結論を出すことが目的ではない
        • 意見の背後にどんな意味づけをしているのか、理解を深める
        • 自分と違う意見でも、暗黙の前提や価値観に興味を持って、理解しようと努める

問いかけのメカニズム

  • 問いかけとは
    • 相手に質問を投げかけ、反応を促すこと
    • 問いかけは、相手の感情を刺激する
  • 問いかけの基本定石
    1. 相手の個性を引き出し、こだわりを尊重する
      • いい問いかけは、「相手への好奇心」から生まれる
    2. 適度に制約をかけ、考えるきっかけを作る
    3. 遊び心をくすぐり、答えたくなる仕掛けを施す
      • ex. 「もし社長にバレないように戦略を1つ追加するとしたら?」
    4. 凝り固まった発想をほぐし、意外な発見を生み出す
      • いつも使うことばを使わず質問してみる
        • ex. 「利便性」をよく使うチームなら、「不便だけど、つい使ってみたくなるプロダクトって?」

問いかけのサイクル

  1. 見立てる
  2. 組み立てる
  3. 投げかける

問いかけの作法①見立てる

  • チームの状態を観察し、一人一人が今どういう状態にあるか?仮説を立てなければならない
  • 対象に解釈を加える
  • 観察ガイドライン
    1. 何かにとらわれていないか?
    2. こだわりはどこにあるか?
    3. こだわりはずれていないか?
    4. 何かを我慢していないか?
  • 見立ての着眼点
    1. 何かを評価する発言
      • ポジであれネガであれ、評価をするということは背後に評価するための観点があり、その根底には何らかの価値観がある
    2. 未定義の頻出ワード
      • 愛着のある「こだわり」か、もしくは形骸化しつつある「こだわり」の可能性が高い
    3. 姿勢と相槌
      • 表情や頷きなどの動きに感情が現れやすい

三角モデルで必要な変化を見定める

  1. 場の目的
  2. 見たい光景
  3. 現在の様子

場の目的パターン

  1. 情報共有
  2. すり合わせ
  3. アイデア出し
  4. 意思決定
  5. フィードバック

問いかけの作法②組み立てる

  • 前提

    • チームにおける自分の立場や役職を考慮する
    • 元々の自分のキャラクターや芸風に合わせる
      • コミュニケーションスタイル
  • 質問を組み立てる順序

    1. 未知数を定める
      1. 素直なアプローチは、「場の目的」や「見たい光景」に設定した言葉
      2. 未定義のワード
    2. 方向性を調整する

      1. 主語の抽象度
        • あなた→チーム→組織→社会
      2. 時間軸
        • 過去、未来

      → 主語の抽象度 x 時間軸 でマトリクスを作る

    3. 制約をかける

      • 制約をかけるテクニック
        1. トピックを限定する
          • 狭すぎると逆に話しにくくなる。問いかける本人の「とらわれ」がある可能性も忘れない
        2. 形容詞を加える
          • ex. たのしく、快適に、豊かに、これまでにない新しい、etc…
        3. 範囲を指定する
          • 主語の抽象度を下げる、時間軸を短くする
        4. 答え方を指定する
          • ex. 1つだけ挙げるなら、3つでに絞るとしたら、10分間のプレゼンをしてください
          • 発散と収束
            • 発散を促すときは、ハードルを下げる制約を、収束を促すときは制約を厳しくする
  • 慣れないうちは、ゆっくり組み立てる
    • 慣れれば、その場で組み立てられるようになる

フカボリとユサブリ

フカボリ

  • チームの根底にある「こだわり」がはっきりしないときに解像度を高める
  • 質問の型
    1. 素人質問:みんなの当たり前を確認する
      1. 「AKY」= あえて空気読まない
    2. ルーツ発掘:相手のこだわりの厳選を聞き込む
      1. when、whyで掘り下げ
      2. こだわりが発露しやすいポイント
        1. 基準の高さ
        2. 過剰な投資
        3. 違いの識別
        4. 怒りのツボ
        5. 偏愛対象
          1. 休みの日には何に時間やお金を投資しているか?
        6. 違和感
    3. 真善美:根底にある哲学的な価値観を探る
      1. “あなたが考える”本質を答えられる問いかけが重要
        1. ex. コロナ禍で実感した、本当の意味での正しいビジネスマナーとは?

ユサブリ

  • 固定観念や価値観のズレなどの「とらわれ」が見えてきたときに、揺さぶりをかけて、新しい可能性を探る
  • 質問の型
    1. パラフレイズ:別の言葉や表現に言い換えを促す
      • バリエーション
        1. たとえる
          • 課題を病気や怪我にたとえてみる
            • 発想の飛躍
        2. 数値化
          • 100点満点で何点?
          • 数値そのものより、「なぜその数値なのか?」を追加で質問し、理由を語ってもらうのがいい
        3. 動詞化
          • 名詞を動詞にする
            • ex. どんな”リニューアル案”がいい?→ 何が”変わる”とよい?
          • 対象の視点がモノからヒトに変わる
        4. 禁止
          • 特定ワードの禁止
        5. 定義
          • 未定義ワードを定義
    2. 仮定法:仮想的な設定により視点を変える
      • バリエーション
        1. 立場の転換:別の立場で考えてもらう
          • 異なる関係者を主語にしてみる
            • ex. 経営陣、競合他社、ユーザー、非ユーザー
        2. 制約の撤廃:目の前の制約を取っ払って考えてもらう
          • 予算、納期、失敗OK
        3. 架空の物語:全く別の世界に想像してもらう
          • SF的発想
    3. バイアス破棄:特定の固定観念に疑いをかける
      • ex. 本当に必要?xxの要素を除外したら?xxxではない領域だと?
    4. バイアス破壊と仮定法の合わせ技
      • ex.
        • もし美容ニーズを持っている女性をターゲット(仮定)から外してもよいとしたら(バイアス)、どんなリニューアルアイデアが考えられますか?(仮定法:制約の撤廃)
        • もしこの世界から五感のうち「視覚」が(仮定)なくなったとしたら(バイアス)、自社の製品をどのようにリニューアルしますか?(仮定法:架空の物語)
    5. とっさの質問リスト
      • フカボリモード
        • 素人質問
          • 「すみません、これどういう意味ですか?」
          • 「初歩的な質問なのですが、これはどういうことですか?」
          • 「理解不足で申し訳ないのですが、このプロジェクトの目的はなんですか?」
        • ルーツ発掘
          • 「どこにこだわりがありますか?」
          • 「なぜそこにこだわるのですか?」
          • 「いつ頃からこだわるようになったのですか?」
          • 「○○○とは何が違うのですか?」
        • 真善美
          • 「「正しい○○○」とはなんでしょうか?」
          • 「本当の意味での「良い○○○」とはなんでしょうか?」
          • 「今こそ考えたい「美しい〇〇〇」とはなんでしょうか?」
      • ユサブリモード
        • パラフレイズ
          • 「その言葉を、別の言葉に言い換えるとどうなりますか?」
          • 「その言葉を、別のものに喩えるとどうなりますか?」
          • 「その言葉を、このミーティングでは禁止しませんか?」
          • 「その言葉を、数字で表現すると、100点満点で何点ですか?」
          • 「その言葉を、改めて定義するとしたら、どのような言葉になりますか?」
        • 仮定法
          • 「もし~だとしたら、どうでしょうか?」
          • 「仮に〜だとすると、どうなりますか?」
          • 「もしあなたが~の立場だったら、どう考えますか?」
          • 「もし制約がなかったら、どうしたいですか?」
          • 「もし世界が〜だったら、どうなっているでしょうか?」
        • バイアス破壊
          • 「本当にXは必要ですか?」
          • 「Xを除外してみると、どうなるでしょうか?」
          • 「Xでない〜は、考えられないでしょうか?」
          • 「XにあえてYを入れると、どうなるでしょうか?」

複数の質問を組み合わせる

(改めて)

問いかけの作法②組み立てる

開始5分が勝負

  • ファシリ熟練者がむずかしいと感じるのは、冒頭。逆に冒頭さえうまくいけば、その後はそんなに難しくない
  • 我々は想像以上に集中していない。冒頭でドキっとする問いかけを。
  • 注意を引くためのアプローチ
    • 予告:事前に伝えておく
      • 心の準備
    • 共感:相手の心境をだいべんする
      • 本当に投げかけたい質問の前に共感コメント
    • 煽動:前提を大袈裟に強調する
      • 大袈裟な枕詞
        • ex. 我が社の社運をかけた課題なので〜、社内の他の誰でもない〜
    • 余白:あえて間を演出する
      • 数秒の沈黙

レトリックで投げかける

  • 問いかけのレトリック3タイプ
    1. 光の量を足す:質問の前提や特定箇所の印象を強める技法
      1. 倒置法
      2. 誇張法
      3. 列挙法
      4. 対照法
    2. 光の色を変えるタイプ:質問の意味を拡げ、イメージをふくらませる技法
      1. 比喩法
      2. 擬人法
      3. 共感覚法
        1. 五感に関する表現で感覚を刺激
      4. 声喩法
        1. オノマトペ
    3. 光を和らげるタイプ:質問の言葉のニュアンスをぼやかす技法
      1. 緩叙法
        1. 二重否定で直接表現の印象操作
      2. 婉曲法
        1. オブラートに包む

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