Shimpei Wakida's Blog

日々の学びをゆるりと.

『英語教師のための第二言語習得論』読んだ

直近、チームにベトナム人の新卒エンジニアを3名迎え入れ、彼らの日本語習得のサポートにつながる示唆が得られないかと思い読んでみた。そもそも「第二言語習得論」という分野があるのを知らなかったので、気になって手に取った。

本のコンセプトとしては、第二言語として英語を教える英語教師のための第二言語習得論の入門書ということだが、「日本人が英語を学習する」に限らず、第二言語の習得という意味で普遍的な内容だった。

まず大前提として、これは言語以外でもそうだと思うけど、「大量のインプット」と「アウトプット」が重要。インプットだけでは、使えるようにはならない。日本での英語学習はインプット偏重となっており、これが日本人が英語を話せない大きな要因とのこと。

とはいえインプットも非常に重要。日本人は、会話の中で次に来るであろう単語を文脈から想像しながら会話をしている。だから、全ての内容を聞き取れなくても会話が成立するし、スピード感のあるテンポで会話ができる。

単語を知らなければ、1単語1単語を聞き逃さないように集中しつつ、単語の意味を変換したり分からない場合は推測しながら会話する必要があるので、圧倒的にスピードが落ちる。

本書によれば、アウトプットの効用は以下の3つがあると言われている

  1. 自分の英語のギャップ、つまり自分はどこが言えないのかについて気がつく
  2. 相手の反応を見ることにより、自分の英語が正しいかどうか、通じるかどうか、仮説検証ができる
  3. 学習者が、自分やお互いの言語について、コメントしたり話したりすることにより、言語に関する意識(メタ知識)が高まる

個人的に、一番の学びとしては、「どれだけ日本語モードONの時間を作ってあげられるかが重要」ということ。 実際にアウトプットとして話すのはもちろん、脳内で日本語の会話をシミュレーションするだけでも習得にはつながるらしい。

例えば30人いるクラスで、何かを日本語で発表する機会が誰に当たるかは分からないが全員に当たる可能性があるという状況では、全員がいつ当てられてもいいように脳内で日本語を会話していることになる。

毎週月曜の朝に全社のMTGをやっているが、そこでは毎回2〜3名がランダムに指名され、先週一週間のGood&Newを発表することになっている。いつ自分が当てられるか分からないので、(日本人であっても)全員何かしらの準備を多少はすることになる。新卒メンバーからすれば、事前の準備やシミュレーション自体も立派なアウトプットと言える。

逆にいうと、事前に明確に決められたアウトプットの場も、当日発表している時間だけでなく、準備の過程で何度も発表のシミュレーションをするだろうから、やはりどれだけ多くのアウトプットの機会を提供できるかが、会社としては重要なんだろうなと思う。

あとは細かい話ではあるが、「日本語としての正しさをそこまで厳密に求めてはいけない」がある。 少なくとも仕事においては、彼らの日本語習得の目的は「文法や語彙が正しく使える」ことではなく「ビジネスにおけるコミュニケーションが取れる」だと思う。この目的においては、多少日本語的な文法が間違っていたとしても、正しく相手の意図を理解し、論理の通った意見を出すことができれば会話は十分可能。日本人だって日本語間違えまくってるし。

なので、僕らとしても日本語的正しさを教えるのではなく、アウトプット機会をどれだけ多く提供できるかが大事なんだと意識し、彼らと向き合っていきたい。