本日開催された「HR Boot Camp」に参加。講師はナレッジワーク代表の麻野さん(麻野耕司 / ナレッジワーク (@asanokoji) / X)。
7月に開催された、ミドルマネジメントを学ぶ「Management Boot Camp」が非常に良かったので、今回も内容に期待して参加。
HR(組織人事)領域に関しては、これまで体系的に学んだことがない。しかし、今後採用等にも深く関わっていくことになる上で知識として必要だと思っていたので、いい機会だった。
今回の参加目的を「とりあえずHRの全体像をつかむ」とした。
参加してみて、1番の目的である全体像の把握については達成できたと思う。
まず、以下のような全体像がある。
- HRが重要な理由
- 企業は「商品市場」「資本市場」「労働市場」の3つの市場に選ばれる必要があり、これまでのハードの時代は生産工場設備投資のための「資本市場」が重要だったが、現代のソフトの時代は商品を作る人材、つまり「労働市場」への適用重要性が高まっている
- HRを成功させるために
- 事業戦略と財務戦略とリンクさせて組織戦略を構築し、実行していく必要がある
- 組織タイプの分類
- 事業ドメインや事業モデルに合わせて組織タイプを選択し、組織施策を実行する必要がある
その中で、取り扱うテーマとして以下。
- 理念浸透
- 理念浸透にミッション・ビジョン・バリューとは?
- ミッションの策定と浸透
- バリューの策定と浸透
- 人材採用
- 人材採用に必要な動機付けと見極め
- 動機付けのためのコミュニケーションマップ
- 見極めのためのアセスメントマップ
- 人事制度
- 人事制度に必要な等級制度・評価制度・報酬制度
- 等級制度・評価制度の設計と運用
- 報酬制度の設計と運用
- 組織編成
- 組織編成に必要な部門編成と階層構造とは?
- 部門編成の設計と運用
- 階層構造の設計と運用
- 人材育成
- 人材育成に必要な役割定義と効果測定
- 役割の定義
- 能力の測定
「HR」という概念にどんなテーマが内包されているのか、まずはここを押さえられたことで参加目的は果たせたと思う。
あとは、個別具体の領域に関しては、今日の講義の内容をベースに書籍等でキャッチアップしていけば、必要な最低限な知識は手に入れられそう。 特に「人」に関わる領域だけに、言うは易しで、どれだけ実行しきれるか、ここに掛かっている。
講義のメモは他参加者の質問のコピペもあるが約2万文字という超絶ボリュームになった。
いくつか印象に残った話を、具体ベースでピックアップして学びを言語化しておく。
ミッション・スタイル(行動指針)浸透における"意義づけ"
意義づけはミドルマネージャーの重要な仕事。リクルートは、オペレーショナルな仕事をプロフェショナル人材に任せることで差別化を図った。ただ、単純な仕事ゆえ飽きがきてしまうのを防ぐ意味で、"意義づけ"が非常によく機能しており、それが会社レベルでの特色(波頭亮さんと麻野さんとの対談で波頭さんが言ったとされる「会社の体臭」という表現が印象的)になっている。
→ マネージャーは意義を語るべき、はEVeMの思想にも通ずる。また、「簡単な仕事だからこそ意義づけが大事」は目から鱗だった。
採用候補者に向けたミッションの伝え方
採用時のメッセージングのフレームワークとして、以下が紹介された。普通の人間は、価値を絶対的に判断できないので、相対的な軸を提供する必要がある。
- ストーリーテリング(時間軸)
- どのように過去・現在・未来を定めるか
- ポジショニング(比較軸)
- 自分達の他社をどの会社と並べるか?
- メッセージング(空間軸)
- 事業や組織にどのような意味づけをするか?
個人的に、会社のミッションを聞いても「ふーん、なるほど」で終わってしまうことが多かったが、それは伝えられるメッセージに上記のような相対軸がなく、咀嚼できていなかったのが要因として大きいんだろうな、と思った。
選んだ方を正解にする!と、マネージャーが腹を括れるかが大事
他社事例で、採用プロセスの最終工程で1泊2日のインターンプログラムを実施していたが、しばらくしてそれは廃止し、管轄部署マネージャーによる属人的な意思決定に変えた、ということがあったそう。
インターンプログラム廃止の背景に、プログラムを経て入社したあと成果がでない社員がいたときに、「プログラムが良くなかったんじゃないの?」と、マネージャーが他責にしてしまう事象が発生したそう。
入社した社員がパフォーマンス発揮できるかどうかは、本人の問題だけでなく、受け入れる側がどれだけ本気でオンボーディングしたかも大きく影響する。
結局「選んだ方を正解にする」と、マネージャーが腹を括れる事が採用の成功の鍵であり、これは採用に限らず全ての意思決定においても同じだと言える。
目標設定やっててよかった!効果感じてる!
従業員モチベーションに関わる因子として最も大きいのは「戦略目標への納得感」という話。
ナレッジワーク社では、Qごとに丸2日全社員が営業も開発も全て手を止めて、全社キックオフで戦略を語る場を設けている。現在社員80名ほどで、いわゆる「100人の壁」という最も難易度の高い組織の壁に差し掛かっている。それでもうまくモチベーション管理しながら組織運営できているのは、キックオフによる効果が大きいとのこと。
麻野さんが、キックオフは「F1のピットイン」のようなものだと例えていたのが印象的。0.何秒の世界を争っており、ピットになんて入らずそのまま走ってた方が速くない?と思ったりもするが、ピットインの時間がなければ最後まで走りきれない。
丸2日手を止めることにより瞬間的な生産性は落ちるかもしれないが、持続性を持って組織運営していくには必要な休憩なのだろう。
弊社もチーム/個人のQ目標設定を運用開始し2Q目が終わろうとしているが、戦略を語ることの効果はすでに実感できている。戦略を語ることで、日々の業務での個人個人のアクションも方向性が明確になり迷うことが少なくなる。自分達の仕事がどこに向かっているのか?何に繋がっているのか?がわかることは、従業員満足度に直結するとOKRの本にも書いてあった。
大手にいたときは、目標設定なんて何の意味も成さない茶番だと本気で思っていたが、今はチーム/個人の成果をドライブさせるために超重要なものだと心から理解できている。
評価において最も避けるべきは「サプライズ」
アメリカの最新HR系カンファレンス等での発表によると、「評価の納得度は、フィードバックの頻度に依存する」とのこと。
弊社のスタンスとしても「評価は納得解」であるが、その納得感をどう醸成するか?という問いに対し、「頻度高くやれ」という極めてシンプルな答え。
1年に一回なんてもってのほか、Q単位でも遅い。理想は1on1だったりで即時に近い形でフィードバックを伝えること。マネージャーにとっても辛い仕事ではあるが、放置してしまうと、評価のタイミングで突然伝えても納得してもらえない、という事態を招いてしまう。
元々知っていた概念ではあるが、改めて頻度高くフィードバックしなければ、と身が引き締まった。
人事制度を作るタイミング = 「評価や報酬にすごい不満が出てきたタイミング」
ナレッジワーク社は、麻野さんがHR領域のプロということもあり、DAY1から現在の人事制度があったが、一般的にはここまでやらなくても大丈夫。
ではいつ作るのが適切なのか?と言われると、「評価や報酬にすごい不満が出て、退職者が増えたりするタイミング」とのこと。評価はあくまで納得解なので、納得感を醸成できている間はしっかりとした制度はなくても運用は可能。
とはいえ、制度があった方がいいよね、は大前提。