1年ぶりの再読。最近は仕事に直接すぐ関係しない本もたくさん読むようにしているが、その理由はこの本に詰まっている。今後も定期的に読み返したい。
ビジネスにおける3つの意思決定
1. アート
組織の創造性を後押しし、社会の展望を直感し、ステークホルダーをワクワクさせるようなビジョンを生み出す。 「美意識」はこのアート領域を指す。
2. サイエンス
体系的な分析や評価を通じて、「アート」が生み出した予想やビジョンに、現実的な裏付けを与える
3. クラフト
地に足のついた経験や知識を元に、「アート」が生み出したビジョンを現実化するための実行力を生み出す
上記3つが、どれか1つだけ突出していてもダメで、バランスが大事。
これまでのような論理思考に軸足を置いた経営、つまり「サイエンス重視の意思決定」では、VUCAと言われるこの不安定な時代を舵取りすることができない。「直感」や「感性」、いわゆる「アート」な決定も同様に重要。
なぜなら現実のビジネスでは、「数値化や論理で説明ができ、白黒はっきりできる問題」ばかりでなく、最終的にはリーダー個人の感覚で意思決定しなければならない場面が多くある。ここで必要になるのが美意識。
論理で説明ができるというのは、逆にいうと誰でも同じ答えに辿りつくことができる。つまり正解のコモディティ化が起こっている。差別化のためにも美意識が必要。
アート VS サイエンス
アートな意思決定は、ロジックで説明できない(説明できるならサイエンス/クラフト)ので、議論の場においてはサイエンスやクラフトにどうしても劣ってしまうとあった。直近の仕事で、まさにこうした場面に遭遇した。
上司であるCTOと同僚のEMがサイエンス的に導き出したGoの意思決定に対して、自分がいわばアート的な感覚でNoをぶつけた。「ワクワクしない」という非常に感覚的な理由でNoを伝えることになったが、最終的には自分の意見を尊重してもらえた。
まともに議論し「論理の正しさ」で勝負するとほぼ確実にアート側が負ける。アート的な意思決定を通すためには、日頃から信頼貯金を貯めておくことが大事だなあと、このブログを書きながら改めて感じた。
グレーゾーンで求められる美意識
変化が激しく法整備が追いつかない現代においては、「違法ではない(≒ グレーゾーン)」の領域が必然的に多くなる。その中では、道徳や倫理観に基づいての意思決定が求められる。つまり美意識。
近年の大企業の不祥事の数々は、まさしく美意識を欠いた意思決定の典型例。意思決定時には合法でも、後から遡って違法になるということもよくあるらしい。特に日本人は、違法性よりも倫理観を重視する傾向にあるらしく、より美意識が重要視される。
美意識の鍛え方
ではどうやって美意識を鍛えるのか?という話だが、本書の中では大きく4つ挙げられていた
- 絵画
- 哲学
- 文学
- 詩
このあたりは、山口周さんが多くの著書で一貫して述べている「リベラルアーツを学べ」に通ずるところ。 最近は仕事にすぐ役立つか分からない哲学・歴史・政治などの本を読むことが増えた。間違いなく山口周さんの影響が大きいが、純粋に知らない領域の知識が増えていくのが面白くて続けられている。