Shimpei Wakida's Blog

日々の学びをゆるりと.

『良い戦略、悪い戦略』読んだ

戦略本の多くは、「会社/事業 がどのように競争優位性を築くか?」という視点で書かれていることが多い。この本にも競争優位に関する内容はあったが、それよりもシンプルな「戦略とは?」に関する内容の方が個人的には面白かったので、そちらについてまとめてみる。

今年読んだ中でもまあまあ上位で面白かったかな。

本書を読み終えて、自社で導入している目標管理のフレームワークは、目標・戦略策定のフォーマットとしてよくできているなーと改めて感じた。フォーマットを使って目標設定を繰り返していけば、戦略というものを意識しなくても戦略策定能力が鍛えられるはず。

以下、読書メモ。

良い戦略の基本構造

良い戦略には、カーネル(診断・基本方針・行動)がある

  1. 診断
  2. 基本方針
  3. 行動

診断は、「何が起きているのかを洗い出し、その原因を突き止める」こと。問題解決における現状把握と原因究明にあたる。「何をするか決めること」だけが戦略ではなく、より根本的な問題は、状況を完全に把握することである。

基本方針は、診断によって分かった解決すべき問題について、どのようなアプローチで臨むか。

行動は、文字通りのアクション。多くの人が戦略を基本方針を名づけてそこで終わっているが、これは大きな間違い。戦略は行動につながるべきであり、何かを動き出させるものであるべき。

悪い戦略の特徴

  1. 空疎である
    1. 具体的じゃない、何も言ってないのと同じ
    2. わかりきったことを必要以上に複雑に見せかける
  2. 重大な問題に取り組まない
  3. 目標を戦略ととりちがえている
  4. 間違った戦略目標を掲げる
    1. ex. 「成績不振等の望ましくないこと自体」を取り組み課題に掲げるのは間違っていて、うまくいかなかったのは結果に過ぎず、取り組むべきはなぜ成績が悪いのかの原因の方

悪い戦略がはびこるのはなぜか?

  • 分析や論理や選択を一切行わずに、地に足ついてない状態で戦略をこしらえようとするから。
    • 結局は、良い戦略を立てるというハードワークを自ら避けた結果
    • 面倒な作業(調査や分析)はやらずに済ませたいという安易な願望
  • 戦略策定の難しさは、結局のところ選択そのものにある。

テコ入れ効果

  • 要は、どれだけ少ない労力で大きいリターンを得られるか、という話
  • 集中によってテコ入れ効果を得る
    • あるレベルを越えるまでは変化が現れないが、ラインを越えると一気に大きな変化が現れる(=閾値効果)がある

近い目標

  • 近い目標 = 手の届くところにあって、十分に実現可能な目標
  • どんなプロジェクトにおいても、状況が完全に解明されていることはめったにない。リーダーの仕事は、複雑で曖昧な状況を整理して、なんとか手のつけられる状態にすること。
    • 多くのリーダーはここでつまづいてしまい、むやみに高い目標を掲げてしまう
  • 戦略本の多くは、状況が流動的になったらリーダーはより先を見越して手を打てと言う。しかしそれは論理的ではない。なぜなら、状況が流動的であればあるほど先は見通しづらい。
    • 不確実性の高い状況であれば、むしろより近い目標を定めるべき。目標は本来将来からの逆算で考えるが、将来が不確実なのであれば「足場を固めて選択肢を増やす」ことが重要になる
  • 目標には階層がある
    • 一番重要なことに取り組むためには、他の重要なことがクリアされていなければならない

設計

  • 戦略策定は、選択肢の中から選ぶというより、自らデザインする設計に近い。
    • マネージャーが意思決定者なら、ストラテジストはデザイナーといえる
  • リソースが少ないなら、よりうまく組み合わせないとシステム全体の性能は上がらない
    • リソースをうまく組み合わせる例を見たいなら、長期に成功している企業ではなく、市場への新規参入した会社を見るとよい
      • 新規参入者は、限りあるリソースの組み合わせがうまくないとそもそも頭角を表せない

戦略と科学的仮説

  • 戦略は科学のようなもの
  • 科学
    • すでにわかっていることを元に、仮説を立ててわからないことを検証する
    • → 「それは確実にうまくいくのか分からない」という理由で戦略を否定するのはお門違い
  • 良い戦略とは、こうすればうまくいくはずだ、という仮説でしかない。理論的裏付けはないが、知識と知恵に裏付けられた判断に基づいている。

戦略思考のテクニック

  • 第一感を疑う
    • 多くの調査が、第一感で出した答えも、熟考した答えも、どちらも間違っていることが多い