戦略本の多くは、「会社/事業 がどのように競争優位性を築くか?」という視点で書かれていることが多い。この本にも競争優位に関する内容はあったが、それよりもシンプルな「戦略とは?」に関する内容の方が個人的には面白かったので、そちらについてまとめてみる。
今年読んだ中でもまあまあ上位で面白かったかな。
本書を読み終えて、自社で導入している目標管理のフレームワークは、目標・戦略策定のフォーマットとしてよくできているなーと改めて感じた。フォーマットを使って目標設定を繰り返していけば、戦略というものを意識しなくても戦略策定能力が鍛えられるはず。
以下、読書メモ。
良い戦略の基本構造
良い戦略には、カーネル(診断・基本方針・行動)がある
- 診断
- 基本方針
- 行動
診断は、「何が起きているのかを洗い出し、その原因を突き止める」こと。問題解決における現状把握と原因究明にあたる。「何をするか決めること」だけが戦略ではなく、より根本的な問題は、状況を完全に把握することである。
基本方針は、診断によって分かった解決すべき問題について、どのようなアプローチで臨むか。
行動は、文字通りのアクション。多くの人が戦略を基本方針を名づけてそこで終わっているが、これは大きな間違い。戦略は行動につながるべきであり、何かを動き出させるものであるべき。
悪い戦略の特徴
- 空疎である
- 具体的じゃない、何も言ってないのと同じ
- わかりきったことを必要以上に複雑に見せかける
- 重大な問題に取り組まない
- 目標を戦略ととりちがえている
- 間違った戦略目標を掲げる
- ex. 「成績不振等の望ましくないこと自体」を取り組み課題に掲げるのは間違っていて、うまくいかなかったのは結果に過ぎず、取り組むべきはなぜ成績が悪いのかの原因の方
悪い戦略がはびこるのはなぜか?
- 分析や論理や選択を一切行わずに、地に足ついてない状態で戦略をこしらえようとするから。
- 結局は、良い戦略を立てるというハードワークを自ら避けた結果
- 面倒な作業(調査や分析)はやらずに済ませたいという安易な願望
- 戦略策定の難しさは、結局のところ選択そのものにある。
テコ入れ効果
- 要は、どれだけ少ない労力で大きいリターンを得られるか、という話
- 集中によってテコ入れ効果を得る
- あるレベルを越えるまでは変化が現れないが、ラインを越えると一気に大きな変化が現れる(=閾値効果)がある
近い目標
- 近い目標 = 手の届くところにあって、十分に実現可能な目標
- どんなプロジェクトにおいても、状況が完全に解明されていることはめったにない。リーダーの仕事は、複雑で曖昧な状況を整理して、なんとか手のつけられる状態にすること。
- 多くのリーダーはここでつまづいてしまい、むやみに高い目標を掲げてしまう
- 戦略本の多くは、状況が流動的になったらリーダーはより先を見越して手を打てと言う。しかしそれは論理的ではない。なぜなら、状況が流動的であればあるほど先は見通しづらい。
- 不確実性の高い状況であれば、むしろより近い目標を定めるべき。目標は本来将来からの逆算で考えるが、将来が不確実なのであれば「足場を固めて選択肢を増やす」ことが重要になる
- 目標には階層がある
- 一番重要なことに取り組むためには、他の重要なことがクリアされていなければならない
設計
- 戦略策定は、選択肢の中から選ぶというより、自らデザインする設計に近い。
- マネージャーが意思決定者なら、ストラテジストはデザイナーといえる
- リソースが少ないなら、よりうまく組み合わせないとシステム全体の性能は上がらない
- リソースをうまく組み合わせる例を見たいなら、長期に成功している企業ではなく、市場への新規参入した会社を見るとよい
- 新規参入者は、限りあるリソースの組み合わせがうまくないとそもそも頭角を表せない
- リソースをうまく組み合わせる例を見たいなら、長期に成功している企業ではなく、市場への新規参入した会社を見るとよい
戦略と科学的仮説
- 戦略は科学のようなもの
- 科学
- すでにわかっていることを元に、仮説を立ててわからないことを検証する
- → 「それは確実にうまくいくのか分からない」という理由で戦略を否定するのはお門違い
- 良い戦略とは、こうすればうまくいくはずだ、という仮説でしかない。理論的裏付けはないが、知識と知恵に裏付けられた判断に基づいている。
戦略思考のテクニック
- 第一感を疑う
- 多くの調査が、第一感で出した答えも、熟考した答えも、どちらも間違っていることが多い