久々の、『外資系コンサルが教える 読書を仕事につなげる技術』に登場するビジネス書マンダラ(経営学独学するならこれだけ読んでおけばOK的なやつ)の1冊。
サクセスストーリーを書く気はない。乏しい頭で私はどう考えたか、それだけを正直に書くつもりである。
(『小倉昌男 経営学』P3 より引用)
とあるように、ヤマト運輸の2代目社長である著者が、宅急便を立ち上げ成長させるまでのストーリーを中心に、独自の経営論をただひたすらに書き連ねた一冊。
宅急便のストーリー自体は、もちろん運送業界特有の業界構造や関連法律、そもそもの時代背景等もあるので"直接"役に立つ学びがあるかと言われるとほとんどない。
ただ、『ストーリーとしての競争戦略』を読んで学んだ通り、全てのコンテキストを含めたストーリーとして見ると学びがある。
経営とは論理の積み重ねである。なかには成功した他社の真似だけをしている駄目な経営者もいる。だが、なぜ他社が成功したか、自社の経営に生かすにはどこを変えるか、論理的に考える必要がある。考える力がなければ経営者とはいえない。
(『小倉昌男 経営学』P260 より引用)
と著者も言っているが、まさに『ストーリーとしての競争戦略』で言っていたことと同じ。
宅急便を始めるときに、同業他社含め周りのほとんどは失敗するだろうと予想していたそう。ただそれは、そんな非効率なことをやっても採算割れるだろう、という程度の浅い根拠によるものだった。
「周りから見ると一見非合理的」に見える打ち手も、全体の一部として機能し、最終的に全体の合理性がとれると、これは強力な競合優位になる。
そして、宅急便の成功を見て、なぜヤマトが成功したのか理由を分析することもなく同業態に参入してきた他社はことごとく撤退に追い込まれる。
この辺りの競合が勝手に死んでいくさまも、『ストーリーとしての競争戦略』で書かれていたもの。
『ストーリーとしての競争戦略』に当てはめてみると、個別の会社の成功ストーリーも非常に面白く読むことができる。
経営者の条件として著者は
経営者にとって一番必要な条件は、論理的に考える力を持っていることである。なぜなら、経営は論理の積み重ねだからである。
(『小倉昌男 経営学』P272 より引用)
と言っているが、本一冊通じて彼が何を考え・実行してきたかがふんだんに描かれている。一人の人間が考えた論理の積み上げとしては、尊敬しかないレベルだった。